この度、たちばな台病院にて血管外科を立ち上げさせていただくこととなりました。血管外科とは、動脈、静脈などの全身の血管を治療する診療科です。日本では血管外科を標榜する施設はまだ少なく、大学病院などの大病院に限られているのが実情です。
腹部大動脈、四肢の末梢動脈、静脈疾患、透析用シャントトラブルなど全身の血管疾患に対し、従来のバイパス手術、カテーテル治療、それらを組み合わせたハイブリッド治療を駆使して、患者さん一人一人に合わせて最適な治療を提供します。北里大学病院や国立国際医療研究センターといった高次医療機関での診療経験を生かし、横浜市青葉区、緑区、町田市、相模原市といった周辺地域の医療に貢献してまいります。外科というと手術をする怖い科というイメージがあるかもしれませんが、丁寧なあたたかい診療を心掛けてまいります。血管のことでお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
足の静脈内にある逆流を防止する弁が壊れ、血液が逆流し血管内に溜まってしまう病気です。足がだるい・重い・むくむといった症状があり、やがて足にコブのようなものができたり、細い血管が透けて見えるようになります。さらに進行すると、色素沈着や潰瘍など、皮膚トラブルを繰り返すようになります。
血液は心臓から動脈を通り全身に送り出され、静脈を通って心臓へ戻ります。足は心臓から遠い場所にあって、重力の影響を受けます。このとき、静脈を通って運ばれている血液が逆流して戻らないようにしているのが静脈弁です。下肢静脈瘤は、この静脈弁が壊れてしまうことで発症します。
早期には自覚症状がほとんどありません。進行するにつれ、足のだるさやむくみ、足がよくつるなどの症状を起こします。さらに悪化すると、足にコブのようなふくらみができる・細い血管が透けて見えるようになります。重症化すると、色素沈着、湿疹、潰瘍などの皮膚トラブルが起こります。
下肢静脈瘤の主な治療には、圧迫療法、硬化療法、ストリッピング手術などいくつ種類がありますが、現在では、レーザー治療・高周波治療などによる血管内焼灼術が主流となっています。血管内焼灼術は、身体への負担が小さく、安全性が高いため、下肢静脈瘤治療の主流になってきています。
当科では、血管内焼灼術を中心に、患者様の状態やご希望に合わせた幅広い治療を行っていきます。日帰り手術を基本としていますが、局所麻酔での治療が怖い、または全身状態から入院での治療が望ましい場合には、全身麻酔、1泊2日での治療も行っています。
当院では、レーザーファイバーを用いた血管内焼灼術を行っています。2mm程度の小さな穴から血管内に細いレーザーファイバーを通し、 照射されたレーザーの熱で静脈を変性させ内側から塞ぐ方法です。周辺組織への障害が少ないため、局所麻酔のみで行うことができ、日帰りで両足の同時手術も可能です。
血管内焼灼術を行う場合でも、同時に何ヶ所か皮膚を切開して静脈瘤を切除することがあります。特殊な器具を使って1~3mmというとても小さい傷だけで静脈瘤を切除します。
血管内焼灼術にスタブ・アバルジョン法を組み合わせることで、より効果的な下肢静脈瘤治療を行えるようにしています。
透析患者様にとって、バスキュラーアクセスは血液透析を行うためになくてはならない命綱です。バスキュラーアクセスをいかに使いやすく、長持ちさせるかということがQOL(生活の質)に関わる大切な問題となります。
当院では、日帰りでのシャント手術から入院治療が必要な症例まで対応いたします。手術室には最新の外科用X線撮影装置(GE OEC Elite CFD)を導入しており、手術とカテーテルを同時に行うハイブリッドの治療が可能です。
全身麻酔での手術にも対応しており、他院でシャント作成が困難と言われた患者様も多数受け入れています。ご相談ください。
またシャントカテーテル治療施行時には拡張部位の血管周囲への局所麻酔を行い、疼痛緩和を心掛けています。
自身の動脈と静脈を吻合して、透析用の太い血管を作成します。最も一般的な方法です。開存率、感染への強さなどでメリットがあります。ご自身の動脈、静脈の性状が悪い場合には、作成することができません。
自己静脈が細い、詰まっているなどの場合に選択されます。人工血管を皮下に植え込み、動脈と静脈の間を介在することで、穿刺可能なシャントを作成します。静脈が細くても作成でき、術後早期から穿刺が可能です。
カテーテルの植え込み術に比べると、日常生活への制限は少ない。
シャントはある程度心臓に負担がかかりますので、心機能が悪く、シャントを作成できない場合に選択します。動脈からは脱血しかできませんので、返血に使用できる静脈が必要です。
上腕に15cm程度の切開を置いて、筋膜下に走行している上腕動脈を皮下に持ち上げます。
様々な理由でシャントが作成できない場合に選択されます。寝たきり等、活動量が低下している患者様では、積極的に選択されることもあります。
シャントは透析患者様の命綱になります。シャントトラブルは生命に直結するため、シャントの不調には早期に対応を行う必要があります。当院ではバスキュラーアクセスの治療経験豊富な血管外科専門医が常時シャントのトラブルに対応します。出来る限り次回透析までに対応を心掛けています。また入院設備がありますので、手術後に入院が必要な患者様についても対応可能です。
当院は透析医療に強い病院であり、緊急の透析が必要な患者様についてもご相談下さい。
シャント内にバルーンカテーテルを入れてふくらませ、狭窄・閉塞を解消します。局所麻酔で行うことができ、30分程度で終了する日帰り手術です。皮膚切開はせずに穿刺で行うことが出来ます。再発した際にも繰り返しシャントPTAの治療が可能です。
当科では拡張部位に局所麻酔を行うことで、疼痛の少ない治療を心掛けています。
人工血管シャントの閉塞や、閉塞したシャントに血栓が多い場合には、小切開をおき、血栓除去術を行います。シャントPTAと同時に行うことも可能です。
動脈硬化が原因で足への血流障害を起こす病気が「閉塞性動脈硬化症」です。足の動脈硬化が進むと足先への血流が少なくなり、下肢の冷感や歩行時にふくらはぎや太ももに痛みが生じます。さらに病気が進行すると、じっとしていても足が痛くなり、最終的には皮膚潰瘍から壊死になることもあります。このような状態は重症下肢虚血と呼ばれ、足の切断が必要になったり、敗血症から命を落とす危険性もありますので、すぐに専門病院を受診する必要があります。
日本では高齢化が進み、動脈硬化疾患が増えています。
特に、糖尿病、腎臓病(人工透析)という病気を持っている方や、高齢で歩けない方は、症状が悪くなりやすいので要注意です。下肢が冷たい、痛いなどの症状がある方は早めの受診が必要です。
閉塞性動脈硬化症の治療は、内服治療、カテーテル治療、外科的治療があります。
内服治療は、主に血液をさらさらにする薬を内服し、積極的に歩行をすることで症状を改善していきます。
カテーテル治療は、局所麻酔で、動脈を刺して行います。ワイヤーを通して、細くなった血管をバルーンやステントを使って広げることで、血流を良くする低侵襲な治療方法になります。
外科治療は全身麻酔で血流の迂回路となるバイパス術を行ったり、動脈の硬くなった内膜、石灰化を除去する手術などが挙げられます。
血管外科では外科治療、カテーテル治療、それらを組み合わせたハイブリッド治療を行っています。患者さん一人一人に合わせた適切な治療を提供し、歩行機能の維持に努めています。
腹部大動脈瘤は人体で最も太い血管である大動脈がこぶのように膨らんだ状態を動脈瘤とよびます。主に生活習慣病による動脈硬化が原因となります。自覚症状はないことが多いですが、ある程度の大きさになると破裂の危険性が生じます。動脈瘤はいったん破裂すると8割以上が救命できない、致死率の高い病気です。動脈瘤の治療は基本的に破裂を予防するための治療になります。
治療法には開腹して直接瘤を切除する人工血管置換術と、カテーテルで瘤の中に人工血管を入れるステントグラフト内挿術があります。ステントグラフト内挿術は、低侵襲(全身への影響が少ない)であり、高齢者や心臓、肺の病気のある方など、開腹手術が困難な方でも施行可能です。当院ではステントグラフト内挿術を積極的に行ってまいります。
透析シャントトラブルなど
急を要する場合は
常時ご相談下さい。